01ハサンベツ里山20年計画、はじまる
はじまりは、地域の人びとの活動でした。これまで培ってきた活動から芽生えた、自然と人が共生するまちづくりへの想い。それを土台に、小中学校で「総合的な学習の時間」が始まることを見すえて、ハサンベツ里山20年計画が動き出します。
- 目指したのは、水辺を中心とした子どもの体験フィールドづくりと農林業を体験できる田畑や森づくり。
平成11年、環境庁(現在の環境省)の補助を受けて、栗山町がハサンベツ地区など約24haを購入。「開発か、保護か。観光か、教育か。」という議論を超えて、あえて人の手を加えながら、人と自然が共生する里山として再生していく道を選びました。
平成13年7月13日、いきものの里づくり協議会を中心とする町民有志のメンバーが主体となり「ハサンベツ里山計画実行委員会」が発足。ここから、20年におよぶ里山づくりの物語がはじまります。


02なぜ「里山づくり」なのか
人里から遠くはなれた山を「奥山」、奥山と市街地のあいだにあって、人びとが農林業を営みながら暮らしてきた山里を「里山」と呼びます。かつての里山では、雑木林を育てながら使う循環型の森づくりが行われ、薪や炭が暮らしの燃料でした。やがてエネルギーが石油に移り変わると、森に人の手を入れて維持する必要のない時代がやってきました。
けれど、石油は限りある資源です。人の手を加えながらの森づくりは、未来の子どもたちが暮らす時代にこそ必要になる——そう考えました。里山で自然とつきあいながら、持続可能な循環のしくみを学び、たくさんの生きものと共生できる場所をつくりたい。それが「里山づくり」の出発点でした。

03実行委員会の約束事
発足のとき、みんなでこんな約束を決めました。
- 1.第4セクターでやろう!
- 他人まかせにしない、自由度の高い活動に
- 2.できることからやろう!
- 計画も推進も、実行委員会で自主的に決める
- 3.知恵・労力・資材・資金を、自分たちで生み出し、持ち寄ろう!
- 行政に資金援助は求めないが、法的整理や関係各所との調整をお願いする
- 4.会員資格は、町内外を問わない
- 自発的な団体・個人をもって実行委員会を構成する
- 5.会費は集めない
- 会議はできるだけ少なく、里山の作業日に話し合う
(現在はボランティア保険代を会費に)
この「自分にできることを持ち寄る」という精神は、
いまもハサンベツの活動の根っこに息づいています。
04ゴミの片付けからはじまった
かつてハサンベツ地区には18軒の農家があり、人の暮らしがありました。しかし離農が進んだ跡地は、不法投棄のゴミ捨て場となり、外来種が生いしげる場所になっていました。最初の仕事は、捨てられたゴミの片付けからでした。田んぼや畑をつくり、里山地の復元を目指しました。


05再生計画を「絵」で表した
むずかしい計画書ではなく、見た人の心に夢がまっすぐ届くように。里山の再生計画は、手描きの絵で表されました。
- 谷津田の風景を再現しよう
- 沢水を使った昔ながらの稲作
- 魚のすむコウホネ池をつくろう
- 淡水魚やトンボの生息場所に
- ミズバショウの群落をつくろう
- 春の美しい景観に
- ホタルを復活させよう
- ヘイケボタルは里山を象徴する生きもの
- 水車小屋を建てて灯りをともそう
- 自然エネルギーを学ぶ場に
- 里山の成り立ち博物館をつくろう
- 歴史文化を発信する場に
あの日の絵に描かれた夢の多くが、いま現実の風景になっています。
06ビジョンとアイデア
ハサンベツ里山づくりを通じて目指す姿を、みんなで思い描きました。
- 1.協働の里山づくり
- まちの諸団体と協力、地域の人びと一丸となっての共同作業
- 2.自然と人の共生
- 里山からはじめる、循環型の社会づくり
- 3.交流と技術の伝承
- 都市と農村との人の交流、世代を超えた技術伝承の場づくり
- 4.自然とふれあう場
- 子どもが自然と身近にふれあうことができる場づくり
- 5.まちの宝物さがし
- まちの現状を知り、魅力を伝えること
07童謡の唄が聴こえる里山づくり
童謡にうたわれた懐かしい風景がよみがえる里山になるように、プロジェクトそれぞれに童謡の一節が名づけられました。
- 「春の小川はサラサラ」プロジェクト
- 約2kmの小川を造成。川や池の生きものを観察し、ニホンザリガニやエゾサンショウウオの生息地づくりを進めています。
- 「ホーホーほたるこい」プロジェクト
- ホタルの鑑賞会をひらき、夜に咲く花の観察会や星座観察など、夜の里山の楽しみを広げています。
- 「ミズバショウの花が咲いている」プロジェクト
- 四季折々の花を観察できる湿原づくり。押し花やリースのクラフト、山菜などの食育にもつながっています。
- 「菜の花畑に入り日うすれ」プロジェクト
- 堆肥づくり・土づくりから始まる農作業体験の場。もち米やそば、なたねを育てて食育につなげ、花モモやハスカップなど景観に配慮した果樹も栽培しています。
- 「ゴトゴトゴットン水車」プロジェクト
- 水の力で発電し、そばひきや水汲みに生かす。水車を通して、自然エネルギーのしくみを学びます。
- 「森の木陰でドンジャラホイ」プロジェクト
- 森の小径での自然観察会や植樹活動、雑木林づくり。栗拾いや木の実ひろいなど「恵みの森」の体験と、子どもたちの冒険の森づくりを進めています。
- 「夕焼け小焼けの赤とんぼ」プロジェクト
- トンボなど水生昆虫を観察し、田んぼと生きものの暮らしのつながりを学びます。稲作のための水辺に暮らす生きものたちと出会える場所です。
- 「カッコウカッコウ鳴いている」プロジェクト
- オオタカやクマゲラといった希少な鳥たちの営巣が確認され、その営巣地や餌をとる場所を見守りながら、鳥たちが安心して暮らせる環境づくりを進めています。
08里山の恵み交流館「納屋」の完成と、これから
絵に描かれた夢のひとつ、「里山の成り立ちを学ぶ博物館をつくろう」。かつて馬小屋だった建物を改修した里山の恵み交流館「納屋」の完成によって、ハサンベツ里山20年計画に描かれた構想は、ひとつの大きな区切りを迎えました。
小川がよみがえり、ホタルが舞い、田んぼに子どもたちの声が響く。荒れた離農跡地から始まった20年の歩みは、いまや栗山町の「ふるさと教育」の拠点となり、年間述べ2,000人を超える子どもたちが自然を学ぶ場へと育ちました。
けれど、里山づくりに完成はありません。草は伸び、水路は土を運び、森は手入れを待っています。人が手を止めれば、里山はまたゆっくりと姿を変えていきます。これからのハサンベツは、つくる時代から、つないでいく時代へ。ここで遊び、学んで育った子どもたちが、次は支える側にまわっていく——その世代のリレーこそが、これからの里山づくりです。


変わらないのは、ひとつ。「和衷協力」——心を合わせ、自分にできることを持ち寄る。
ひとりの力は小さくても、共に力を合わせれば実現できる。はじまりの日から大切にしてきたことです。
あなたが里山を訪れ、思い思いにすごす時間もまた、この物語の続きの、大切な一場面です。
ようこそ、ここはみんなのふるさと「ハサンベツ里山」です。